第7項より
「藪ヘッドハンターに注意」
世の中には藪医者がいるのだから、藪ヘッドハンターがいてもちっともおかしくない。それではこの藪ヘッドハンターがどのくらいいるかというと、わんさといる。藪ヘッドハンターに煮え湯を飲まされ、ひどい目にあった転職経験者のヘッドハンターである筆者が言っているのだから間違いない。
藪井竹庵のような医者にあたると下手をすると命を失うことになるが、藪ヘッドハンターにあたったときの被害も相当なものだ。命を失うことこそなくても、自分の人生が狂ってしまう。
筆者は、後述するように4回目の転職のとき、社員がボロボロ辞めていくアメリカ系のハイテク企業に入社したが、この会社を紹介したのは、業界大手の一角といわれる人材紹介会社の副社長であった。
また、筆者が求職活動を行っていたときのエピソードであるが、ある有名人材紹介会社のこれまた副社長から連絡があった。新しく日本に進出してくるアメリカ系電気部品会社で支社長を求めており、一度アメリカの社長に会ってほしいとのことであった。
早速、副社長に会い、あらかじめ先方の会社の内容や条件等を詳しく聞いてみることにした。筆者を事務所で50分ほども待たせた副社長のヘッドハンター氏は、約束の時間に遅れたお詫びも言わず、すぐそのまま詳しくアメリカの部品会社の内容を説明し始めた。
年収も悪くはなく、かなり上昇するようで、何といっても日本の支社長というポジションは魅力的であった。専門分野が少々筆者の分野と違うところもあるが、筆者はやってみて成功させる自信は十分あった。
その後、アメリカ本社の社長が来日したおり、ホテルニューオータニの会員制クラブで会うこととなった。この会員制クラブに行ってみると、前の人のインタビューが長引いているので30分待ってほしいとのこと。ここで初めて複数の候補者の一人に過ぎないことに気付いた。少々腹立たしかったが、一応会ってみることにはした。会って話をしているうちに、だんだん先方の社長が乗ってきて、かなり長時間のインタビューになった。ところが、この副社長のヘッドハンター氏はインタビューを途中で打ち切ろうと画策し始めた。何のことはない、初めから筆者は単なる「あて馬のピエロ」に過ぎなかったのである。このようなレベルのヘッドハンターが案外と多い。
アメリカにおいては、医者と弁護士とヘッドハンターは、社会的地位としては同列にランクされるという。その真偽のほどはともかく、日本ではまだヘッドハンティングの世界は未熟であり、その分問題もある。日本において、ヘッドハンターが医者や弁護士と同レベルであるかどうかは別として、いずれも”人を相手にする仕事”という点では同じである。
患者から医者を見たとき、名医とそうでない人の差は極めて大きい。弁護士の場合も(後述するように筆者も弁護士の世話になったことがあるが)、有能な人とそうでない人の差は同じように大きい。ヘッドハンターもまったく同様である。これは人材を相手にビジネスを行う仕事の宿命であるといえる。
よって、転職を成功させるためには、優秀なヘッドハンターを見分けることが重要である。
しかしながら、人材紹介もビジネスである。ヘッドハンターの方も逆に相手を値踏みすると、付け加えておく。 |